ズームバック×オチアイ 特別編「落合陽一、オードリー・タンに会う」という番組がNHKで放送されました。
今や時の人となった台湾のIT担当閣僚、オードリー・タンの話しはとても示唆にとんでいる内容が多いので、今回は気になった部分のメモと感想を書きました。
オードリー・タンの経歴
・1981年台湾生まれ
・ 8歳 プログラミングを独学開始
・14歳 中学校を中退
・15歳 IT会社を企業
・19歳 シリコンバレーで起業
アップル社で顧問
・24歳 トランスジェンダーであることを明かし、改名
・35歳 台湾で最年少かつトランスジェンダーで
世界初の閣僚(デジタル担当大臣)に就任
・38歳 東京都のコロナウイルス対策サイトの修正に参加
さて、本題に戻って、以下テレビでのサマリからです。
●オードリー・タンへの1問1答
Q: 好きな食べ物は?
A: 炭水化物とたんぱく質と脂質
Q: 犬派?猫派?
A: 私は「人間派」ですね
Q:寝る前に必ずすることは?
A: 目を閉じます
Q: 小さいころ何になりたかった?
A: 人間の大人です
Q: 今年1年を表す「一文字」は?
タン:中国語でもアラビア語でも他の国の文化でも同じように書くこの文字。もし1なら漢字なら横の棒「一」、他の文化なら縦の棒「1」になる。ゼロは回転しても同じ、地球の皆が同じ原点を共有したということで「0」を選んだ。
落合:英語で言うとborder。境界の「境」。
タン:「境」は0と1の間にある文字。そこから月のように満ちていく可能性もあれば欠けていく可能性もある。
落合: 面白い。バイナリ―(2進法。全情報を0と1で表すデジタルのデータ形式)では0と1の間は境だ。今年象徴的だったのがトランプ氏のtweet(「This is why we need borders!(我々には国境が必要だ!」。2020年ほどborderについて考えたことはないのでこれを選んだ。
タン: 今まさに「境」がどうなるかが問われている。今は自分と他の人の間にマスクで境界線を作らないといけない。手から体内にウィルスを吸収しないために、自分の顔と汚れた手の間にも境界線を引かなくてはならない。でもここで手を洗えばボーダー(マスク)を取り外すこともできる、これもテクノロジーだ。未来はどうなるか、テクノロジーで何ができるか。すべては「人」次第。
中略
「自律共生的な」=コンヴィヴィアリティ(哲学者・イヴァン・イリイチが説いた「共に生きる価値観」)がひとつのキーワードになるだろう。
落合:さっきオードリーの言った「清貧(モディスティ)」。人も文化も虚栄心も、レジリエンス(弾力性:衝突や危機から回復する力)を持っている。今、清貧な状態に置かれたとしても人は虚栄を目指すかもしれない。導入された文化がどう維持されるまたはもとに戻っていくだろうか?
タン:コンヴィヴィアリティは日本の侘び寂びにも通じる。余所から価値を輸入したり奪ってきたりするのではなく、今目の前にある環境を活かして共に生きて行こうという考え。人類は歴史上はじめて世界中が等しく同じ悩みを持つことになった。同じ環境・同じ文化を生きていると言える。時差・物理的距離の壁もインターネットが越えた。ひとつの新しい文化だ。人類は歴史上初めて、先進国と途上国という枠組みを超えて地球規模のコンヴィヴィアリティ(共生)を手にした以上、前に戻る必要はない。ワクチン完成後も地球規模で物事を考えていくべき。
落合:時空間を越えると、「大きな文化」「新しい文化」になる。皆で語り合うことができたら一番楽しい喜びだ。
中略
イギリスの経済学者J.M.ケインズは同じ思いを抱いた。1929年に起きた世界恐慌への悲観論に真っ向から反対した論文「孫たちの経済的可能性」(1930年発表)の紹介。今の苦しみは過去の行いのツケではなく「急速な成長の痛み」に過ぎない。このまま科学が進歩し労働効率は高まり続ければ、100年後労働の必要すらなくなる、と予想。
タン:2030年までまだあと「10年」猶予が残されている。SDGsの達成目標年でもある。ケインズはすばらしい予言を残した。「金儲け」と「価値ある仕事」は違う。SDGsの目標の中でGDPについては1項目のみ。GDPに悩むのは169分の1の時間でいい。予言通り、お金のためだけに働く必要はなくなる。自分の心を満足させるために働く社会がやってくるだろう。今は苦しいこともあるが10年後、GDPは意味を失っているだろう。
落合:成熟した国では2030年になる前に可能かもしれない。アフリカの問題、発展途上国の問題としては根深く残っている。2030年は越えるかもしれないが、SDGsの言うように誰も取り残さずに達成されるといいなと思う。
タン:コロナ禍の今、事態は明確になった。お金がいくらあっても病気にはなる。だからこそお金よりももっと大事な価値=「生きていくこと」に必要なものは等しく世界中のみんなに行き渡るようにしなければならない。あと10年、技術の発達を信じ世界が歩み寄り続ければ、人類はお金に悩む段階から「次の段階」へと歩み出せる。
落合:90年前は「非」物質的な生産がほとんどない時代。「ゲームの産業」が先進国で増えている。「生産性のあるもの」と「生産性のないもの」という議論は無意味。物質なのか情報なのか意味がなくなってきた。
中略
落合:経済可能性から考えると、(資源を消費した)物質的生産が起こらなくても互いにコミュニケーションが取れる。限られた資源を奪い合ってコストを決定する経済とは別な論理で生産活動を考えることができる。デジタル化することによる時間の永続性や、コピーの限界費用(もう1つ作る費用)の低さを考えると、いま(物理的に)現存する空間と時間より「重い」意味がデータ化した後の時間や空間にある。デジタルすごい重要。
唐鳳 これまでの経済では必ず物的資源・人的資源の搾取が行われる。デジタルの世界なら他の誰かを凹ませる必要がない。デジタルの世界は無限。皆が同じスタートラインに立てる。
「落合陽一、オードリー・タンに会う」面白かったですね。
また、2人ともかなり先の未来を見ていることがわかりました。なかなか難しい内容でしたが、自分の頭で未来のことを想像したら、少しは理解したような気がします。
未来といってもこれからは、*exponentialな成長をする時代です。あと10年もすれば新しい次の世界が開けるかもしれません。
*「exponentialとは?」の記事もご覧ください。
さて、これから科学の進歩によって、オードリーの言う「お金に悩む段階」から「次の段階」へ行くのかも知れません。AIやロボットが普及することで、人間の仕事が無くなると言われていますが、それは、過酷な労働からの開放でもあります。働く目的が「お金を稼ぐ」から、マズローの欲求段階説にある「自己実現」、「自己超越の実現」欲求のために働くことになるかもしれません。
また、人間の争いの原因は、結局は有限な資源の奪い合いです。食料やエネルギーが無尽蔵にあったら、この世から戦争は無くなるのでしょうか?
SDGsなどで国や企業が課題解決に乗り出しているので、だんだん世界は良い方向に向かっていると期待したいものです。
また、物質世界からデジタルの世界にシフトすればするほど、限界費用は0に近くなり、みんな同じスタートラインに立てるとあります。
今途上国でスマホなどのネット環境が急速に普及していますが、これによってオンラインでの教育機会が広く与えられれば、これも同じスタートラインに立てることになり世界はさらにフラット化するということかもしれません。もしくは、途上国のポテンシャルは進行国よりも高いかもしれませんね。
今、米中をはじめ、自国中心主義の傾向が強くなっていますが、ケインズの予測した100年後の2030年までオードリーはまだあと10年あると言っています。
さて、この10年で世界は一体どう変わっていくのでしょうか。。
今よりも世界が平和になっていること、人々が幸福になっていることを、願いたいものです!