今日ご紹介する本は、『NOKIA 復活の奇跡』(リスト・シラスマ著)です。
NOKIAとは
フィンランドの企業。2011年までは世界最大の携帯電話端末メーカー。市場占有率および販売台数の両方で、1998年から2011年まで首位を維持していたが、その後、スマートフォン戦略に出遅れ、経営危機となった。さらに、2014年マイクロソフトへ携帯電話事業を売却した。
現在の主要事業は、無線技術を中心とする通信インフラ設備の製造・開発となっている。
簡単に言うと、ガラケーで世界No1の会社だったが、スマホで出遅れてしまったという会社です。
でも創業は、パルプ製紙会社だったんですよね。
ノキア全社員に機械学習を勉強させた方法
私がこの本を知ったのは、2018年にハーバードビジネスレビューの記事
”ノキア会長が実践した、機械学習を全社導入する方法”
https://www.dhbr.net/articles/-/5608
という記事を読んだことがきっかけでした。
この記事でリスト氏は、全社に機械学習を導入しようとするのであるが、
その流れは以下のとおりである。
・リスト氏が、機会学習を軽視
↓
・その後、機械学習の進歩を感じて危機感を持つ
↓
・専門家から機械学習とは?について、レクチャを受ける
↓
・しかし、機械学習の全体像が見えない
↓
・人に頼ってはダメと反省
↓
・Coursera(コーセラ)で機械学習を自習
↓
・機械学習について学んだことを、他人にレクチャする
今もNOKIAのホームページに、
Why you should study AI and Machine Learning and how I did it
(AIと機械学習を勉強すべき理由と私が勉強した方法)
というサイトがあります。
https://www.nokia.com/blog/study-ai-machine-learning/
また、リスト氏がyoutubeで機械学習を説明している動画はこちら。
リスト・シラスマの凄さ
ベンチャー企業であれば、トップ自らが技術を学び、自社の方向性を示していくということはありますが、ノキアのような大企業のトップが、最先端の技術を自分の目で確かめて、率先垂範で社員をリードしていることに大変驚きました。
元々、リスト氏は、F-secureというセキュリティ系企業の創業者であり、技術的バックボーンと起業家精神はあったのでしょう。
一方、日本の経団連に入っているような大企業はどうでしょうか?トップ自らが、自分で技術を勉強するといったことはまず無いでしょう。そもそもハンズオンのマネジメントをやっていないですね。
でも、よく考えると今の世の中は、テクノロジーによってあっと言う間に産業構造が変わってしまうインパクトがあります。それなのに、トップが技術の本質やトレンドを理解していないということはかなりリスクがありますね。
『NOKIA 復活の奇跡』について
冒頭にお話したとおり、NOKIAは世界No.1のガラケー事業が転落し、さらにマイクロソフトとの協業を図っている矢先に、マイクロソフト自体が携帯電話を出すことになってしまいました。これはノキアにとっては衝撃的な出来事となったのです。
しかし、他の役員は危機感を持っていないのです。どこの会社も”ゆで蛙”状態になってしまうんですね。いよいよ、本業が壊滅的になってしまい、その後、さらにノキアは命であるはずの携帯事業をマイクロソフトに売却することになるのです。
ここまできたら、普通はもう終わりだと心折れてしまいますよね。
さて、この続きはぜひ本をお手にとってみてください。
最後に、この本のなかに出てくる企業家的リーダーシップだけメモしておきます。
特に、「5 学習依存症になる」はリストらしいと思います。
《起業家的リーダーシップ》
1 説明責任を負う
2 事業を直視する
3 粘り強さを持つ
4 リスクを管理する
5 学習依存症になる
6 焦点をぶらさずに保つ
7 地平線の先を見る
8 交換を持ち線形する人たちでチームをつくる
9 「なぜか」と考える
10 夢を見ることを絶対にやめない