権限委譲は組織内で効率的に仕事をするためにとても重要な仕組みです。
今回は、権限委譲について、また権限委譲の意味を持つエンパワーメント(Empowerment)とデリゲーション(Deligation)の違いについても説明します。
部下を持っている方にはぜひ、ご覧いただきたいと思います。
権限委譲とは何か?
会社の業務は、本来個人つまり社長が一人ですべての業務を担当できれば良いのです。
ただ、現実には、社長一人では手が足りませんし、各専門スキルもありません。
そこで、社員を雇い、組織を作って業務を細分化します。ただし、業務は細分化するだけではありません。一定の責任と権限の範囲をさだめて業務を細分化するのです。
これが権限委譲です。
社長は、一定の範囲の責任と権限を、部下(役員など)に委譲します。その部下(役員など)も同様にその下の部下(部長など)に一定の責任と権限を委譲します。
こうして会社組織では、幅広い業務に対応できるのです。
この権限委譲による責任と権限の所在を明文化したものが決裁規定などと呼ばれている文書です。
社員は与えられた権限と責任の範囲のなかで仕事を行うのですが、その範囲を超えるような業務が発生した場合、その判断については、その責任と権限を持っているものにお伺いをたてるのです。それが、決裁や稟議と言われるものです。社長権限なら社長へ稟議をあげ、役員権限ならば役員へ判断を仰ぐことになります。
この仕組がしっかりとできている会社は、内部統制がしっかりとできている会社といえます。
当たり前の話しですが、実はこの基本的なことを経営者でも良く理解できていない人がいるのです。
権限委譲するメリットは?
1 上司が本来すべき業務に専念できる
これは、社長が一人では業務をできない例で示しました。業務を部下に委譲することで、上司は上司がすべき業務(役割)に専念するのです。
社長は、仕事がいくら丁寧だと言っても、コピーをやってもらうわけにはいきません。社長には社長しかできない仕事があるのです。
しかしながら実際には、部下に割り当てるべき業務を自分でやってしまったり、部下に委譲した業務について、事細かく口を出すような人がよくいますよね。「マイクロマネジメント」というやつです。「マイクロマネジメント」は権限委譲していないということです。私の経験上、マイクロマネジメントをする上司は、組織全体の生産性を悪化させる、一番やってはいけない最悪なマネジメントスタイルだと思っています。
2 現場でスピーディーな判断ができる
セールスで訪問してくる営業マンに、「こういうことはできないかな?」「ここまで含めて提案できない?」などと質問をすると、その都度「上司に確認してお返事します」という人がいる一方で、「良いですよ。ここまで当社で対応します」という人など、いろいろな方がいます。
お客の立場では、その場で判断してもらうと話しも早いので、そういった会社や営業マンと付き合いたいものです。
もちろん営業マン側にとっても、お客様とその場で営業判断できれば、商談もスピーディーに進むためとてもメリットがあります。
注意:その場では安請け合いをして、数日後に「すいませんが、やはりここまでしかできません」と謝罪してくる無責任の営業マンもたまにいます。そういう営業には気をつけましょう!
3 社員のやる気スイッチがはいる
人は仕事の責任と権限を与えられたら、意識が他人事から自分事に変わるものです。権限委譲をするときに、その仕事の背景やなぜその仕事をその人に委譲するのか、を説明してもらえれば、人は自分事としてやる気のスイッチがはいるものです。
それは、どんなに単純な作業でも、しっかりと伝えることで人はやる気をもって業務にのぞんでくれるのです。
4 社員の学習する場ができる
権限移譲は人材育成の基本です!
【人材育成に悩んでいる方必見!!】たった一つの人材育成方法とは?
という記事も、ぜひご覧ください!
デレゲーション(Delegation)と
エンパワーメント(Empowement)の違いは?
権限移譲を英語では、デリゲーション(Delegation)と言いますが、最近では、(部下育成のためにというにニュアンスで)仕事を任せる場合、エンパワーメント(Empowerment)が使わます。
ではこの2つの意味の違いはなんでしょうか?
簡単に言えば、
✓Delegation=全権委任
✓Empowerment=自立できるよう力を与える
Delegationは、全権委任ということです。責任も含めてすべてを委譲をすることです。
悪い意味で使った場合は「丸投げ」です。私も過去に「丸投げ」してくる上司もいましたが、勝手に全権委任をされたという解釈で仕事をしていました。むしろ「マイクロマネジメント」する上司よりはよほど仕事はやりやすかったです。
Empowermentは、三省堂「大辞林」によると、”権限の委譲。企業において従業員の能力を伸ばすためや、開発援助において被援助国の自立を促進するために行われる。”とあります。つまり自立を促すために、力を与えるということです。
まとめ
従来のヒエラルキー型組織から、最近ティール組織と言ったようなフラットな組織形態が注目されています。従来は、上司と部下の間に情報格差があり、それが判断力の差となっていましたが、ネットによって情報がリアルタイムかつフラットに共有される時代です。
そんななか、ヒエラルキー体制を維持すれば、企業のスピード感が失われるのは当然です。
また、そもそも上長は権限委譲をうまくすることが仕事ですが、なかなかうまくできないのです。マネジメントもますますプレイングマネージャー化しているため、下手をすると部下も競争相手にみてしまうのです。本末転倒ですが、よくある話しです。また、事細かに自分のやり方にこだわりを持ちすぎる反面、本来もっと中長期の大きな仕事をしなければならないのに、部下でもできる仕事を部下と競ってはマネジメントの意味がまったくないのです。
エンパワーメントは、「部下に仕事を任せ、失敗の責任は持つ」という覚悟が必要です。
これがもしできないなら、責任も含めて部下に丸投げするほうが良いでしょう。