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あるある! ダメな「中期経営計画」

皆さんの会社の「中期経営計画」いわゆる「中計」を、見たことはありますか?

上場企業であれば、一般投資家向けに中期経営計画を公開している会社も多いと思います。

参考事例:
●三井物産 中期経営計画(pdf)
https://www.mitsui.com/jp/ja/ir/library/meeting/__icsFiles/afieldfile/2020/05/12/ja_203_4q_chukei.pdf

●日立製作所 中期経営計画(pdf)
https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2019/05/0510/f_0510pre.pdf

公開されていない場合でも、中計をベースに単年度事業計画や経営方針、組織・人事戦略などの形となって現れているかもしれません。

さて、そんな会社の将来を方向づける大事な中計ですが、なかなかうまく作れていない会社が多いと思います。
今回は、私もかつて経験したダメな策定例をあげます。みなさんの会社でもいくつか「あるある」の事例だと思います。
今回は、ダメな事例を挙げていき、次回では中計のあるべき策定論を書きたいと思います。

では、「あるある!ダメな中期経営計画」です。

ビジョンが無い

このパターンは経営者に中期経営計画のやる気が無いことが多いです。
恒例の面倒な儀式、やらなくてはならないしきたりくらいに感じてやっているのではないでしょうか。
中計はこうありたいというビジョンが一番大事です。意思無き中期計画には魂がありません。そんな魂のこもっていない中計ならば、そもそもやらないほうがマシです。

財務視点のみ

これは数字だけの内容になっているパターンです。
経営計画は、バランスドスコアカード(BSC)<今回はBSCの説明は省略します>で使われる、それぞれ「4つの視点」(以下)から議論されるべきですが、「財務の視点」だけ、つまり取らぬ狸の皮算用パターンですね。

◆4つの視点
 1 財務の視点
 2 顧客の視点
 3 業務プロセスの視点
 4 学習と成長の視点

「財務の視点」つまり数字の話ばかりしても意味が無いのは当たりまえですが、こういう会社はPLばかりを議論することが多いのも特長です。これは最悪です。なぜなら、中経はその名のとおり中期視点をもった計画にしなければなりません。それに対してPLは短期的マネジメントの結果の表れです。にも関わらず、わかった振りをして、PLばかりを語っているのは経営のスキル不足に他なりません。
PL脳が会社を滅ぼすのです!!

●参考図書:『ファイナンス思考 日本企業を蝕む病と、再生の戦略論』(朝倉祐介 著) 

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「顧客の視点」では、顧客のことを考えているとのではなく、先程も述べたとおり自社の視点からのみこの事業をどうするとか、と言った議論ばかりです。これでは「顧客の視点」ではありませんね。
また「業務プロセスの視点」は、今デジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性が叫ばれているとおり、戦略に不可欠な内容です。
しかし、多くの経営者は、興味が無いか苦手分野のため、重要なポイントとは認識しておらずスキップします。

自社の理屈のみ

議論される内容は自社の理屈だけというケースもよくあります。例えば、「この事業をどうすべき」とか、「この組織は要らないんじゃないか」、「営業利益は10%に持っていこう」とか、「人員はどれくらい必要だ」とか、確かに大事なポイントでありますが、議論が自社の話だけに終始することは良く見受けられます。特に、成功体験が大きい大企業に多く見受けられます。

数字はボトムアップの積み上げ

中計は3年~5年単位でつくることが多いと思いますが、その数字を現場の組織に積み上げさせるやり方です。振られた事業責任者や営業責任者は、数字をあまり大きくもなくあまりり小さくもない5%から10%程度成長のちょうど良いサジ加減で収まるようエクセルで調整します。もちろんこの数字に根拠はありません。根拠は後付で理由を探すのです。
よって、各組織からあがった数字は、どれも同じ成長率ですので、集計した結果も当然5%~10%成長する数字となります。この内容にトップマネジメントはまあまあの安心感をもって、中計を進めることになります。
終わってみれば、全く計画を達成しないパターンです。

新規ビジネスをバッファに使う

大体の企業では、中計の体裁を整えるために、「新規ビジネス」を必須科目としてとり入れます。つまり中計のお飾りです。これから、「イノベーションに取り組んでいきます!」と言ったら、それなりな感じがしますからね。
もっと最悪なことは、なんとなくグラフにもう少し右肩上がりの角度をつけたいと言ったときです。新規ビジネスはなんでもできるワイルドカードのように、バッファとして数字の調整材料となります。
こういう会社に限って、新規ビジネスのやる気は無く、既存ビジネスを大事にしています。

作っておしまい

中計を作るのに、それなりの人手や時間をかけて会議や集計作業などを行いパワポにキレイにまとめます。これで一連の儀式は終わり、それなりの達成感があります。しかし、その成果物はなんとそのまま机のキャビネットに直行しそのままアーカイブ資料となります。ただ作り終えたという自己満足だけが残ります。

毎年作り直す

一般的に中期経営計画は3年単位などで実施しますが、そもそも作った中期計画はお蔵入りしているので、ローリング(周期的に見直すこと)のときに数字レビューくらいは行われます。
しかし、具体的なアクションを伴っていないので、数字にGAPがあった場合に原因追求することができません。すると翌年にまた0からスクラッチで中期計画を作ることもあります。
それって、「中期経営計画じゃないじゃん!」ってツッコミしたくなるケースです。

以上、「よくあるダメダメな中期経営計画」の事例を挙げてみました。

皆さんの会社の中期経営計画もチェックしてみてください。
○が1つでもあったら要注意。3つあったら中期計画策定は止めましょう!
5つあったらその会社は重症です!

No 項目 該当に○
1 ビジョンが無い
2 財務視点のみ
3 自社の理屈のみ
4 数字はボトムアップの積み上げ
5 新規ビジネスを売上のバッファに使う
6 作っておしまい
7 毎年作り直し

次回は、「あるべき中期経営計画策定編」を述べたいと思います!